涙飴
でも、ありがとうってどういう意味だろう。
そう思っていたら、五十嵐が掴んでいたあたしの手を放してあたしに背を向けた。


「わりぃ…今の忘れて」


そう五十嵐は言ったけれど、忘れられる訳がない。

だって、今もまだこんなにドキドキしている。


「……行くか」


五十嵐はそう言って、屋台のある通りへ歩きだした。

あたしはその横に小走りで近付く。


何だか苦しい。


帯のせいかもしれない。
でも、今まで感じた事のないような、そんな苦しさだった。
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