涙飴
教室に戻る途中、泣いて目の赤くなった華耶に会った。


「姫月……」


華耶は助けを求める様な声であたしを呼んで来た。
すると、五十嵐があたしの背中をポンッと押してくれた。言わなきゃいけない。


「あのさぁ、華耶は美津菜が何で怒ってるか分かってる?」


冷静な口調で華耶に問い掛ける。


「あたしが鳴海君と仲良くしてた事?」


なんだ、分かってるんじゃん。
考えてみれば、ここまできて気が付かないとなれば相当鈍感な人間だろう。


「どうしてあんな事したの?」


「だって、そんなつもりなかったし…それにあたしには彼氏いるから、別に気にしてないと思ってて……」


そこまで言うと華耶は溜めていた涙を一気に出した。
しばらくあたしは黙ってたけど、気持ちを落ち着かせるように深い呼吸をして口を開いた。


「気にしてないって……なんで?
あんなに美津菜は華耶に言ったじゃん。『鳴海とあんまり話さないで』って。
おかしいんじゃない?
それに大地の事だって、最初はそんな訳ないとか言っといて結局今付き合ってるじゃん。言ってる事とやってる事、めちゃくちゃだよ。
何であたしの目の前で告白したの?
何であたしの目の前で大地と仲良くしたの?

何で……?人を悲しませて楽しい?
華耶のせいで悲しんでる人が居るのが分からないの?」
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