涙飴
さっき泣いたばかりの目に、また涙が溜まる。
駄目だ。
これ以上言葉に出したら涙が止まらなくなる。

周りの生徒はあたしたちの事をジロジロと見て来る。
こんな廊下のど真ん中で、お互い泣きながら喧嘩なんかしてたら注目を浴びるのも当然か。
ひそひそと何かを言っているのが、微かに聞こえて来る。


『何々?喧嘩?』

『男の取り合いとか?』

『三角関係らしいよ』

『どっちが悪いの?』




止めてよ。
何も知らないくせに勝手な事言わないでよ。

もう限界……。


「お前らざわざわうるせぇんだよ。関係ない奴が勝手な事言ってんじゃねぇよ!
あと九條、お前いい加減にしろよ。
泣けば済むとか思ってんの?
本当最低だな」


そう怒鳴り声を上げたのは、五十嵐だった。


「行くぞ」


五十嵐はそうあたしの耳元で呟くと、あたしの手をとり廊下を走り出した。


「え!?ちょっと……」


五十嵐に引っ張られてあたしも走る。
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