涙飴

体育祭

火薬の臭いが微かに鼻をつつく。


「は~あ……体育祭とか本当いらないよね~」


赤いはちまきをした美津菜は、眠そうな顔をしながらそう言った。


「とか言ってさっきのリレー一位取って凄い喜んでたじゃん」


「まあアンカーだったし一位は普通に嬉しかったけどさ、もう体力使い果たしたんだもん」


そんな美津菜を見ながら、なんだかんだ言って美津菜は足が速いからいいじゃん、とあたしは心の中でぼやく。

あたしなんか殆どこのブルーシートの上で待機なのに。


「華耶は相変わらず一人だね」


ブルーシートの端の方に居る華耶を見ると、美津菜の言う通り、華耶は一人で座っていた。


あの日以来、あたし達は華耶と一緒に行動しなくなった。あたし達が避けたのもあるけど、華耶もあたし達を避けている様な感じだった。

一人でいるのは別にいじめられているからとかではない。
ただ、誰も華耶に近付く人が居なくて、結果一人になったのだ。
それもそうだ。
『人の男を平気でとる』という噂が広まった今、華耶と友達でいようとする人はなかなか居ないだろう。
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