涙飴
その言葉を聞いた瞬間、何かがドクンと反応した。


今日はまだ一度も五十嵐を見ていない。
でもそれは気付かなかったからではなく、気になって仕方なかったからだった。


「そうだね」


でもそんな事は言わず、あたしは興味の無い様な返事をする。
だって言ったら、また美津菜はあたしが五十嵐の事を好きだと勘違いする。

そんなんじゃない。
気になっているのはきっと、五十嵐が特別な存在だからで、でもその“特別”には、愛とか恋とかいうものは無くて。


「もー…そんな事言って本当は気になってるんじゃないのー?」


美津菜はそう言いながら、自分のバッグの中をあさり始めた。


気になってる……けどさ。
でも、本当にただ気になっているだけ。
ただ、最近あんまり話さないから少し緊張しているだけ。

あたしはゆっくりと視線を五十嵐の居る隣の席へ移す。
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