涙飴
「って、聞いてる!?」
バスに乗ってから30分位経った。
右隣の五十嵐はずっと眠ったままだし、そのまた隣の鳴海も寝てるし、左隣の美津菜も今正に眠りに入ろうとしている。
「…うん。そうだね」
聞いてないし。
窓の外の景色を見ると、いつの間にか朝日が昇っていて、明るく光って見えた。
そしてその光を遮る様に、大きなトラックがバスを追い越して行く。
もう一度美津菜を見ると、美津菜は既に夢の世界へ入っていた。
1人で起きているのもなんだか虚しいし、あたしも寝ようと目を閉じた。
けど、朝慌てて来たせいか眠気は全く無くて、仕方なく目を開ける。
「ん~…」
声のした方を見ると、閉じていた五十嵐の瞼が開いていた。
胸がドキドキしているのは、ただ話すのが久しぶりだから。