涙飴
顔を真っ赤にしながらそう言う大地が、あたしにはとても眩しく見えた。


“大切な記憶”


あたしは大地を好きだった頃の記憶を思い出す。

あたしにとってもその記憶は大切なのだろうか。


…大切なんだ。
だって、忘れたいなんて思わない。
初めは大地が華耶と2人で居るのを見る度、忘れたいと何度も思っていた。


だけど今、改めて考えてみると、忘れなくて良かったと思う。


それは大地と華耶が別れたからとかじゃなくて、きっと自分の中の変化なんだ。



「…やっぱり、あたしが惚れただけの事はあるね!

大地が落ち込んでるから、何か力になれないかなぁって思ったんだけど、その必要はないみたい。

…だって大地、もう自分で答え出して、前に進んでるじゃん」



あたしが、こんなに時間をかけてやっと出せた答えを
大地はほんの数週間の間に出したのだ。

あたしが思っていた以上に大地は強いとその時感じた。
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