涙飴
「華耶!?」


そこに居たのは、いつもより髪に湿り気のある華耶だった。


「あ、姫月!
姫月も雨宿り?」


「うん」


「……姫月の友達?」


大地が横から顔を出しながら、遠慮がちに聞いてきた。


「うん。
同じクラスで一緒に居るんだ」


「九條華耶です。
よろしく」


「あ……うん」


あたしはそこで、大地の反応がいつもと違う事に気付く。
人見知りとかはしない方だと思っていたのに、目の前の大地は明らかに口数が減っているし、下を向いて目を合わせようとしない。

可愛いタイプは苦手なのだろうか。

中学の頃はそうでもなかったと思うけど……。


「家、ここら辺なの?」


「ううん。
あたし達の家の近くにあるバス停からバスに乗ってんの」

大地は「ふーん」と言って、また下を向いた。


「二人は家近いの?」


今度は華耶が尋ねて来た。


「家向かいなんだ」


華耶は「そうなんだー」と言って、大地へ視線を向けた。
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