涙飴
その中に桃が居るはずなのだけれど、桃の姿は何処にも無い。



「あー…桃ならきっと今頃恋愛橋だよ」


案の定他の2人に聞くとそう答えた。


やっぱり…と思っていると、美津菜が突然立ち上がった。


「あたしも行って来る。
誰かに先越されたら元も子もないし」


そう言う美津菜の表情は、今まで見た事のない位真剣なものだった。

そんな美津菜にあたしは笑顔を向ける。


「うん。頑張って」



そしてあたしは、テーブルの上に置かれていた小さなプレゼントを美津菜の手の平にそっと置いた。


それは、手の平に収まる程の大きさだけど、その中には美津菜の想いが沢山詰まっているのが感じられる。



美津菜は深く頷き微笑むと、しっかりとした足取りで鳴海の居る部屋へと向かった。
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