涙飴
華耶は視線を落としたまま、数秒黙っていた。


そして顔を上げると、真剣な表情で話を始めた。



「話って言うのは…その…」

中々切り出さない華耶に、あたしは段々苛ついてくる。

それが華耶にも分かったのか、決心した様にあたしの目を見て来た。



「単刀直入に聞くけど…姫月、五十嵐君の事好きなの?」


いきなりそんな事を聞かれるとは思っていなかったので、あたしは直ぐに答える事が出来なかった。



「なんで?」


少しの沈黙の後、あたしの口から出たのはこの3文字だった。


華耶はあたしの目を真直ぐに見つめて来る。
逸らしてしまいたくなったけど、逸らしたくなかった。


逸らしたら、負けの様な気がした。


華耶も視線を逸らそうとはしなかった。

心臓がドクドクと音をたてる。
太股の上に置かれた手は、汗ばんでいた。


それでもあたしは落ち着いた様に、華耶の大きな瞳を見続けた。




「…あたし、五十嵐君が好きなの」
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