涙飴
「大地君、アド教えて!」


「えっ?」


大地は相当びっくりした様で、勢い良く顔を上げた。


「せっかくだしさ。
駄目?」


「いや、良いけど……赤外線でいい?」


華耶がコクリと頷くのを見て、大地はスラックスの右ポケットからシルバーの携帯を取り出す。

2人が携帯を出しているのを見てる時、正直複雑な気持ちだった。

本音を言えば、やっぱり他の子とはメールして欲しくない。
我が儘だよね。
付き合ってもいないのに。

でも、華耶はあたしが大地のこと好きって知ってる訳だし、心配する必要はないか。


「そういえば、なんで九條は俺の事知ってたの?」


突然のこの質問に、あたしは動揺した。


「姫月から聞いてたから」


代わりに華耶がサラリと答える。


「へぇー」


そう言いながら、大地は携帯を持った右手の親指を、忙しそうに動かす。

なんか、薄い反応。
なんであたしが大地の事話してるのか、とか、どんな話をしてるのか、とか疑問に思わないのかなぁ……。
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