涙飴
あたしが横目で五十嵐の方を見ると、五十嵐は右隣の鳴海と話をしていた。


「後で話すよ」



あたしはそう一言美津菜に告げると、美津菜の手に握られているポッキーの袋からポッキーを1本抜き取り、それを口の中で砕いた。

美津菜は納得したようで、『分かった』とだけ言ってそれ以上その話題に触れて来る事はなかった。



ここで話をしなかったのは、近くに五十嵐が居るという事もあるけど、あたしと五十嵐の間に居る華耶が原因でもあった。

と言うのも、今日の華耶は昨日とは打って変わってまるで借りて来た猫の様に大人しいのだ。

きっと昨日の告白が原因だとは思うが、それにしては妙に静か過ぎる気がする。


考え過ぎなのかもしれない。
だけど、今までの五十嵐の態度からしても、五十嵐がNOと答える事は覚悟していたと思う。

それ程好きだったという事だろうか。


でも、華耶の様子はショックを受けていると言うより、何かを必死に考えている様に見えた。


そんな華耶を横に、昨日の話をするのはなんだか気がひけた。
今更そんな事を気にする必要は無いと思いながらも、やっぱり話す気にはなれなかった。
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