涙飴
それどころか、五十嵐は真っ直ぐに想いを伝えてくれたのに、あたしはそれを受けとらなかった。

支えどころか、傷をえぐる様な事をしてしまったのだ。


そんなあたしに、五十嵐の側に居る権利などあるのだろうか。
こんな無力なあたしと一緒に居ても、苦痛になるだけではないのだろうか。

そんな考えが生まれたのと同時に、鳴海が口を開いた。


「なんでこんな事を言ったかっていうとさ、それだけ晃正は織原の事が好きって事を言いたかったんだ。
だから、織原も晃正の事想ってるんならちゃんと伝えて欲しい。

あと、この話は他の人にはしないでね。勿論晃正にも。

晃正、そういう目で見られるのが嫌みたいで、言うなって言われてるんだよね。
言っちゃったけど」


そう言って鳴海は悪戯っぽく笑った。
そして最後にこう付け足す。
「晃正には、幸せになって欲しいんだ……だから、晃正の事、ちゃんと見てやって」


そんな言葉にあたしは『分かった』と返事をした。


そう返事をしたものの、正直胸のわだかまりが消えた訳ではなかった。
鳴海の言っていた事は分かっている。
分かっているからこそ、告白する事をためらってしまう。
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