涙飴
何となく、五十嵐の中の“影”を感じたあたしは、何と言葉を返したらいいか分からなくなった。

触れてはいけないと思うのに、どうしても知りたいと思ってしまう。


それは、好奇心からではなく、ただ、彼の事が知りたいだけ。
ただ、彼の支えになりたいだけ。

――ただ、彼の事が好きなだけ。


「そう言えばさ、いっつも放課後こうやって勉強とか読書とかしてるけど、何で家に帰らないの?」


あたしはふと疑問に思った事を口にした。
だけど、それを聞いた五十嵐の表情が少し曇ったのを見て、こんな質問をした事を後悔した。

そして五十嵐は静かに答えた。


「……家に、なるべく居たくないから」


何か、家に嫌な事でもあるのだろうか。
もしかして……


「竜夜君が居るから?」


そう聞いてから、あたしは自分がした間違いに気付く。
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