涙飴
ショートケーキ
ずっと
あたしの目の前には
真っ赤な苺ののった
ショートケーキがあった


だけど
食べるのが怖くて
なくなってしまうのが怖くて
ただずっと
ショートケーキを眺めていた

それだけで幸せだった
その存在だけで
あたしは笑顔で居られた



でもね

ショートケーキはあたしのものではなくて
他の誰かのものでもあって

他の誰かも『食べたい』と言った



なんて、馬鹿なんだろう
あたしは
食べる時の幸せに気付いていなかった

ショートケーキが
彼女の口に収まるのを見るのが怖くて
やっとフォークを手に取ったのに


ショートケーキはもうあたしの側からは離れていて

ショートケーキは今では彼女の近くにあって


きっとあたしが手を伸ばしても届かない


きっとフォークがどんなに大きくても
届く事はないだろう
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