涙飴
弟の存在や昔の事など、五十嵐本人から聞いた様な錯覚を覚えていた。

恐る恐る五十嵐の表情を窺うと、特にさっきと変化はなかった。


「悠士に聞いたの?」


五十嵐の言葉に、ピクリと肩が反応する。


「う、うん……。
ごめん、勝手に」


「別に謝らなくていいよ。
悠士が教えても大丈夫だと思ったから言ったんだろ?

で、何処まで聞いたの?」


案外五十嵐は怒っていない様だ。
そして、鳴海の事を信頼しているのがその言葉から伝わって来る。


あたしが鳴海から聞いた事を全て話すと、五十嵐は「そんな風に思ってたのか…」と呟いた。

あたしはこれ以上聞かない方がいいのかも、と出かけた言葉を飲み込んだ。
だけど、五十嵐の切なそうな表情を見たら、その考えは間違っている様な気がしてきた。


「竜夜のせいじゃねぇよ」


あたしが話すのより先に五十嵐から話してくれた事に、少し驚いた。
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