涙飴
「あいつは、悪くない。

確かに、竜夜が弟になってから、周りには比較ばっかりされた。
でも、俺は気にしてなかった。
周りの目とか、評価とか、そんなものはいらなかった。

俺が欲しかったのは、その……」


そこで言葉を濁すと、顔を真っ赤にして言葉を続けた。


「……母親からの愛情。

そんなの、欲しいなんて言う奴は殆ど居ない。
皆、生まれた時から無条件で貰ってるから。

でも、俺の親が離婚したのは俺がまだ本当に小さい頃だったから、母親の事は何一つ覚えてない。
離婚してから会ってないし、手紙も電話もない。
まぁ、直ぐに再婚したみたいだから、俺の事なんてどうでもよくなったんだと思うけど。

だから、父親が再婚するまで、俺は母親からの愛情って言う物を一度だって感じた事はなかった。
勿論、父親からの愛情はちゃんと感じてたけど、友達の母親を見たりすると、凄く辛かった。


自分も、あんな風に愛されたいって思ってたんだ」
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