涙飴
“愛されたい”

その言葉は昼休みの時にも聞いた。
五十嵐の表情は、その時の華耶の表情と何となく似ている気がした。


「だから、父親が再婚して新しい母親が家に来た時、俺、すげぇ嬉しかった。


すげぇ優しいし、いつも笑ってて、本当の母親みたいで。
嬉しかった。
けど、やっぱり、何処か違うんだ。


竜夜と俺への接し方がさ。

竜夜とは実の親子な訳だし、少し差があるのは仕方のない事だって分かってた。


母さんさ、よく褒めたり慰めたりする時に、相手の頭を手で軽く叩くんだ。

例えば竜夜がテストで学年一位から二位に落ちて泣いてた時とか、模試の結果が県で一位だった時とか、竜夜が生徒会長になった時とか。


俺は、された事ねぇんだ」


あたしは、あたしが華耶と喧嘩して泣いていた時、五十嵐がそれをしてくれたのを思い出した。

あの行動に、そんな五十嵐の気持ちが隠れていたとは、思いも寄らなかった。
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