涙飴
ただ、やっぱり二人はそれが少し強いのだと思う。


「まぁ、もう愛とかどうでもいいけどさ。

母親の愛が欲しいとか、マザコンかっつうの」


そう言って、笑う。
そんな五十嵐を見ると、抱き締めたいという感情が込み上げて来た。
だけど、感情通りに体を動かす事が出来ず、代わりに出たのは声だった。


「嘘でしょ」


「嘘じゃねぇよ」


「だって、今勉強してるじゃん。
嫌いなんでしょ?勉強。

嘘じゃないなら、家に帰ればいいじゃん。
竜夜君と自分への、お母さんの接し方の違いを感じるのが嫌だから、帰らないんじゃないの?」


あたしのその指摘に、五十嵐は言葉に詰まる。

五十嵐の表情には、先程の笑顔は無くなっていた。


「誰かに愛されたいって思うのは、当たり前じゃん。
だからさ、素直に言えばきっと伝わるよ。
皆にだって、素直に気持ち伝えれば、分かってくれる」

「いいんだよ!もう」
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