涙飴
あたしの言葉を遮って、五十嵐はそう声を上げた。


「皆に言ったって、返って来るのは同情心だけだろ。

誰も、俺の事をちゃんと見てくれる奴なんか居ない」


五十嵐の中のもう一つの影、それは“孤独”だった。

華耶もまた、同じ影を背負っていた。
だから五十嵐は、あんなに的確に華耶の核心にある思いを言い当てたのだろう。


「皆そうだ。
『好き』って言って来ても、竜夜が学校に来た途端、『やっぱり頭も良くなきゃ』とか言ってさ。
結局初めから俺の事なんて何も見てなかった。

周りの評価だけで判断して、順位つけて、勝手に文句言ってさ……」


「あたしは、好きだよ」


あたしの突然の告白に、教室内の時間が一瞬止まる。

言った後から、心臓が激しく音を立て始める。

今告白するつもりはなかったけれど、どうしても言わずには居られなかった。


あたしは五十嵐の言葉を待つ。
だけど五十嵐の返事は、冷たいものだった。
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