涙飴
「止めろよ。
同情とかされても嬉しくねぇから。

お前は小野寺が好きなんだろ?」


その口調から、ピリピリとした雰囲気が教室中に広がる。
だけどここで諦めてはいけない。
また同じ事の繰り返しになってしまう。


「それは誤解だって。
あたしが好きなのは五十嵐なの!」


五十嵐に負けじと声を張る。
けれど五十嵐の心には届かない。


「そんな嘘吐かなくていいから」


「だから嘘じゃ……」


「同情はいらないって言ってるだろ!?」


五十嵐はそう大声を出すと、鞄を持って教室から出ていった。

あたしはポツンと教室に佇んでいた。
何も出来ない自分に腹が立つ。

今なら追いかければ間に合う。
そう頭では分かっているのに、足は一向にその場を離れようとしない。

そんな悔しさが、涙となって頬を伝う。
泣くしか出来ない自分が情けなくて、もどかしい。

今、本当に泣きたいのは五十嵐なのに。
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