涙飴
そう言って、大地はニコリと微笑んだ。
その微笑みからは大地の優しさや温かさが滲み出ていた。

思い出す。
昔のあたしはそんな大地の優しさや温かさに惹かれていたんだ。
あの頃は、大地の事が好きで好きでたまらなくて。
でも、今の様な不安や躊躇いなどは感じていなかった。

劣等感に押し潰されそうになったり、どうしようもない程自分が情けなく思えたり。

そんな感情を覚えたのは、五十嵐の事を好きになってからだ。

何が、違うのだろう?


「同情じゃない。
でも、五十嵐を傷つけてばかりのあたしに、五十嵐の彼女になる権利なんてないよ。
さっきだって、五十嵐を追い掛ける事が出来なかった。

五十嵐さ、今までずっと苦しんで来たんだ。
誰かの愛が欲しい。でも、周りに五十嵐の事をちゃんと見てくれる人が全然居なくて。
凄く、辛かったんだと思う。

支えに、なりたいと思った。
五十嵐があたしの支えになってくれた様に。

だけど、あたしはいつもいつも五十嵐を傷つけてばかりで。
情けなくて、臆病で、意気地無しで、弱虫で。

そんなあたしが、五十嵐の支えになんかなれない。
きっとまた、傷つけてしまう。

あたしじゃ、五十嵐とは釣り合わないよ。
もっと、五十嵐に相応しい子と付き合った方が、きっと五十嵐も幸せになれる」
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