涙飴
不安が、戸惑いが、劣等が、
あたしの心に重くのしかかっていた感情達が、涙となって溢れ出てくる。

こんなにも弱くて、こんなにも脆いあたしが、誰かの支えになりたいなんて、高望みなのだと思う。

それまで黙ってあたしの話を聞いていた大地は、何か思い出したようにその口を開いた。


「姫月さ、何で俺に告白したの?」

「えっ……何でって…好きだからだよ」

「だろ?じゃあ何で今あいつに告白する事が出来ないんだよ。
あの時、お前言ってたじゃん。
『好きって伝えたかった』って」


『あのさぁ…告白って何の為にすんのか分かってんの?
付き合う為じゃねーだろ?
自分の気持ち伝える為だろ?

答えなんか関係ない。
お前の気持を伝えるんだよ』


あの日、オレンジに染まった図書室で言われた五十嵐の言葉。
その言葉に背中を押されて、あたしは大地に告白する事が出来たんだ。
そして五十嵐自身も、恋愛橋の上で、その言葉通り気持ちを伝えてくれた。
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