涙飴

涙飴

階段を駆け下り、玄関に続く廊下を一心不乱に駆け抜ける。
廊下のひんやりとした空気が、全身を通り抜けていった。

五十嵐がまだ学校周辺に居る事を願いながら、あたしは玄関に向かう。

だけどあたしはそこで足を止めた。
玄関には、誰かの啜り泣く声が響いていた。

下駄箱の間を通り奥まで足を進めると、壁にもたれ掛かる様にして涙を流す五十嵐が居た。


その姿を見た瞬間、誰かに言われた訳でも、考え込んでいた訳でもなく、唐突に、自分の中である一つの答えが見出だされた。
何故、大地を好きだった頃には感じていなかった重苦しい感情が今あるのか、という問いに対する答え。
それは、思っていたよりもずっと単純で、逆に何故今まで気が付かなかったのか不思議な位だ。

あたしは静かに五十嵐との距離を縮める。
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