涙飴
本当に単純な答えだ。
大地の事は大好きだった。
だけど、五十嵐の事はそれ以上に大好きで、だから苦しんだり悩んだりした。

いつの間にか、五十嵐への想いは不安や戸惑いが生まれる程大きくなっていたんだ。


「五十嵐!」


あたしが涙を流す五十嵐にそう声を掛けると、五十嵐は一瞬こちらに視線を向けた。
だけど直ぐにそれを逸らすと、背中を向けて歩き出す。


「待って!」


そう呼び止めると、五十嵐の足が止まった。
伝えなきゃ、そう自分に言い聞かせる。
緊張で、口の中はカラカラに乾いていた。


「五十嵐はいつだってあたしの支えになってくれて、気が付いたら凄く凄く好きになってた。

だけど、ずっと悩んでた。
あたしなんかじゃ五十嵐とは釣り合わない、五十嵐を傷付けてばかりのあたしが、五十嵐の支えになる事なんて出来ないって」
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