涙飴
―――ピンポーン



微かに聞こえたインターホンの音。


あたしは玄関まで全速力で走り、勢い良く玄関のドアを開けた。


「ごめん!遅れた」


大地の顔を見ると、顔が自然とにやけてしまう。
あたしは緩んだ顔を引き締めると、黒いパンプスを履きながら口を開いた。。


「来ないかと思った!」


「……ごめん」


その大地の台詞に何処か違和感を覚えた。
何処が?と聞かれれば自分でも良く分からないが、妙に素直と言うか、大人しいと言うか。

いつもなら、『はあ?たったの10分だろ?
そんくらいで文句いってんじゃねーよ!来てやっただけでもありがたいと思え!』
とか何とか冗談を言いそうなのに。


「……なんか、いつもと違くない?」


「へ?別に普通だよ」


そう笑って答える大地。
あたしの勘違いなのだろうか。
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