涙飴
大地は顔を真っ赤にさせながら、大きな声でそう叫んだ。


華耶が振り向く。
その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいる。


卑怯だよ。
そんなかわいい顔で泣くなんて……。




華耶は大地の元へ走って来ると、おもいっきり大地の胸に飛び込んだ。

あたしの目の前で抱き合う二人。

……こんな光景、見たくない。

なのに、体が石みたいに動かない。

今目の前で何が起こっているのかさえよく分からなくて、涙すら流れない。




そして二人の唇は、段々とその距離を縮める。


信号の青が点滅しているのが、視界にぼんやりと映った。



見たくない


あたしはおもいっきり走りだした。
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