涙飴
あたしは馬鹿だ。
大馬鹿者だ。


何で気付かなかったのだろう。

大地はいつだって華耶を見ていた。


大地は好きな人に対してだと、あんな表情をするんだ。
照れて俯いたり、口数が減ったり、あたしは一度だってそんな態度をされた事はなかった。

いつだって、華耶を見ていたのに。

あたしの事なんて、幼馴染みとしてしか認識されていなかったのに、何を勘違いしていたのだろう。





――――あたしは、宛も無く走って走って走り続けた。



でもこんな時でも体力の限界はあって、あたしは息を切らしながら足を止めた。

履き慣れないパンプスで走ったもんだから、靴擦れを起こしている。

さっきまで流れていなかった涙が、知らないうちに頬を濡らしていた。


何で、あたしはこんなにも馬鹿なのだろうか。


「大…地……」


あたしはその場で泣き崩れた。
周りには沢山人が居たけれど、気にはならなかった。


こんな結末を迎えるのなら、大地の事を好きにならなければ良かった、なんて思ったりしたけれど、結局そんなのは強がりに過ぎなくて。

涙は止まらなかった。


そんなあたしの涙を乾かすかの様に、空から太陽が街中を明るく照らしていた。
< 48 / 268 >

この作品をシェア

pagetop