涙飴
どのくらい泣いていただろう。

どんなに悲しくても涙は枯れるものだ。
あたしは改めてそれを実感した。


目の辺りが熱く、鏡を見なくても目が腫れているのは感覚で分かった。




あたしの足は、さっきの交差点へ向かい歩き出していた。


あの二人は見たくないけれど、もしかしたらまだ居るかもしれない……あたしの事を探しているかもしれない、なんていう淡い期待を抱いていたんだと思う。





交差点に、二人の姿はなかった。

靴擦れした所が、ズキズキと痛み出す。

さっき枯れた筈の涙が、また頬を伝う。


一粒…二粒…三粒……―


「う…ひっ…うう……」


あたしは泣きながら家までの道を辿った。


映画に誘った事も、今日の為に真剣に洋服を選んだ事も、今までして来た事全てが馬鹿らしく思えた。
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