涙飴
一番右の、一番後ろの席に座り一人静かに本を読んでいる。


「五十嵐っていつも何やってんの?」


あたしは声を落として美津菜に問い掛けた。
聞かれた美津菜は首を傾げる。


「いっつも放課後教室に居るんだよね。
でも、誰かを待ってる訳でもなさそうだし……いつも一緒に居る鳴海は、授業終わると直ぐに帰ってるし」


「へー……でも本読むならレポートやればいいのに」


「五十嵐にしてみればこんなレポート朝飯前でしょ!」


「へ!?五十嵐って頭いいの?」


つい声が大きくなってしまう。

正直見た目からは頭が良いとは到底思えない。
いつも何処かで遊んでるような人だと思っていた。

顔は、申し分ない程かっこいい。
美津菜曰く、この学年で断トツトップらしい。

まぁ確かにあたしもかっこいいとは思う。


長身に長い脚、モデルみたいに整った顔立ち。
笑ったら、殆どの女は皆一瞬で落ちるだろう。


にも拘わらず周りに女の子が居ないは、多分五十嵐の見た目と性格が原因だろう。
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