涙飴
「五十嵐君ってそんなに頭いいの?」


今度は華耶が美津菜に問い掛ける。


「うん。この前のテスト学年一位だったらしいよ」


「まじ?」


ついつい声のボリュームが上がってしまう。


「一位ってすごっ!でも偉いね……ちゃんとやる事やって自分の好きなようにしてる訳じゃん?」


「そーだねー……姫月はやる事やってないもんねー」


「はー?美津菜には言われたくないんですけどー!」


レポートの存在などすっかり忘れたあたしと美津菜は、そんな下らない言い合いを始めた。


「九條!」


突然教室中に華耶を呼ぶ声が響き渡る。

後ろを見ると、ドアから大地が顔を出していた。


「彼氏のおでましじゃ~ん!」

美津菜は茶化しながら、華耶の肩をポンと叩いた。

あたしはつい無口になってしまう。

ドアの方へ目をやると、一瞬大地と目が合ってしまった。
だけど、あたしは直ぐに目の前のレポート用紙へと視線を移す。
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