涙飴
結局、言えなかった。
何だか、自分が凄く卑怯な人間に思えたからだ。


美津菜に言って、慰めて欲しかったの?

一緒に華耶の愚痴を言いたかったの?

同情して欲しかったの?

美津菜に、華耶の事を嫌いになって欲しかったの?


あたしは、華耶にされた事と同じ位酷い事をしようとしていた。

それに華耶は、あたしに酷い事しようとして大地を好きになった訳じゃない。

好きっていう感情は、誰にも否定出来ないもの。
あれは、仕方のない事だったんだ。

なのに、なのにあたしは……。
大地だって、華耶の事が好きで、あたしはただの邪魔者だった。


やっぱり言えない。
こんな陰口みたいな事、言える訳がない。

大地に告白出来なかったあたしに、こんな事を言う資格などない。



ふと顔を上げると、丁度華耶と大地が校門から出ている姿が窓を通して見えた。

二人の手は、しっかりと繋がれていた。

いわゆる、カップル繋ぎ。


それを見た瞬間、涙が溢れそうになった。
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