涙飴
黒板には、お祭りと書いてあって、その上には赤いチョークではなまるが書かれていた。

どうやら正式にお祭で決まった様だ。


「お祭りって何やるの?」


あたしが聞くと、華耶が答えた。


「いくつかお祭りの屋台を作るんだって」


「ふーん」


文化祭、かぁ。
大地と一緒に回りたかったなぁ、何てまた叶わない夢を見てしまう。
叶わない夢の後には、虚しさが押し寄せて来る。


「文化祭皆で回ろうよ!そしたら皆同じ時間にしなきゃだね」


美津菜の提案にあたしは快くのった。


「華耶は?」


美津菜が聞くと、華耶は苦笑いをする。
あっ……そっか。
また、あたしの叶わない夢を華耶は叶えるのだろう。


「大地と回るのか!早く言ってよー!」


「うん……ごめんね?」


「いいよいいよ。
うちら二人で回るし。
華耶は大地とラブラブしなっ!」


ラブラブだなんて、我ながらよく言えたと思う。
今だって、二人が別れることを心の何処かでは願っているくせに。

最近のあたしは、嘘しかついていない気がする。

笑っていないとおかしくなりそうで、だけどその笑顔に本当の笑顔なんか無くて。

五十嵐と正反対だな、ふとそんな事を思った。
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