涙飴
「もしかして……今も?」


「……うん。幼稚園の年中の頃から、ずっと」


絶対笑われる。
笑わないにしても、心のどこかでは馬鹿にするだろう。
高一にもなって未だに初恋の相手を想い続けているなんて、自分でも時々馬鹿らしくなってくる。
だけど、それでも好きなのだ。


「本当に好きなんだぁ」

華耶の返事は、あたしが予想していたものとは違っていた。
思わず反論してしまう。


「でも、やっぱり変だよね……」


「そんなわけないじゃん!一途に思ってられるって、本当に凄いと思う」


今まで隠していたあたしの気持ちを肯定する華耶の言葉は、あたしの心を溶かしていった。
そして華耶にだけは、自分の気持ちをちゃんと言おうと思った。


「なんで今まで言ってくれなかったの?」

「中学の頃友達に言ったら散々馬鹿にされてさー。
一途過ぎだとか、おこちゃまだとか。
だから高校入ったら誰にも言わないって思ってて……」

「そっか、ごめん。
無理矢理聞いちゃって……」

華耶は申し訳なさそうな表情でそう言ってきた。


「全然!むしろあんな風に言ってもらえて本当に嬉しかったよ」

あたしはそれに笑顔で答える。

「よかった。
あたし姫月のこと応援するから!
大地君って何組?」

「5組だよ」

「そっか。まだ入学してちょっとしか経ってないから分かんないなー。
今度居たら教えてね!」

「分かった!」

話せる人がいるっていうのは思ってたよりずっと心地良い。
やっぱり、言って良かった。


「美津菜には言わないの?」

華耶のこの質問にはすかさず

「言わない。言ったら絶対馬鹿にされるもん」

と答えた。
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