涙飴
「ね……美津菜、ここってどうやって解くんだっけ?」


「てかさぁ姫月、そこ何回目だっけ?」


「……五回目?」


皆で勉強すると、自分の馬鹿さが身に染みて分かる。


「じゃあ晃正に教えてもらいなよ!」


「へ!?」


「どうせ晃正、今回のテスト範囲なんて完璧なんだろ?」


鳴海の言葉に五十嵐がゆっくりと顔を上げる。


「まあ……」


「じゃあいいじゃん!」


そう言って鳴海はとびっきりの笑顔を見せて来る。
そんな鳴海には悪いと思いながらも、正直嫌な気持ちがあたしにはあった。
五十嵐とのレベルの差に、きっと五十嵐自信もびっくりするだろうし、それに頭がいい人の説明っていうのは大抵分かりにくいものだ。


「いいよ」


五十嵐の答えは、意外にもそんな言葉だった。


「え……いいよ、絶対馬鹿だって思うもん」


基礎問題にもてこずるあたしを、五十嵐はきっと馬鹿にするだろう、そう思ったけど五十嵐からは否定される。


「別に思わねぇよ。貸せよ」


そうぶっきらぼうに言うと、あたしの手から問題集を奪った。


「つうかさ、これからテストまで皆で放課後ここで勉強しない?」


鳴海の突然の提案に、美津菜は待ってましたと言わんばかりの笑顔になった。


「いいね!そうしようよ!ね?姫月」


「え?あ……うん」
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