《完》オフィスでとびきりの夜を
「やめ……、瑞樹……!」



一瞬だけのキスの合間に、
あたしは短く叫んで身を
よじり、拘束を逃れようとした。



だけどすぐにまた瑞樹は
唇をあわせてきて、あたし
を解放してはしてくれない。



どんどん深くなるキスに、
あたしは徐々に頭がボーッ
としてくるのを感じた。



混乱してるはずなのに、
段々と体の中を甘い痺れが
巡ってく。



瑞樹のいつもどおりの――
ううん、いつも以上に熱く
あたしを追い立てるキスに……

あたしの心が震えて、
切なさにも似た喜びを
感じてる……。



「ん………瑞、樹……」



深い波に溺れ、
くずおれそうになった頃。



――ようやく瑞樹はそっと
唇を離して、あたしの顔を
覗き込んだ。
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