《完》オフィスでとびきりの夜を
まっすぐにあたしを見て……

笑みのない無表情にすら
見える顔で、言った。



「――感じた? 今のキス」



「……………!?」



(な……何言ってるの?

なんでそんなこと……)



「ねぇ莉央。

オレに感じたかって、
そう聞いてるんだよ?」



「瑞樹………」



なんでそんなイジワルな
質問をするの?



こんな状況で、イジワルなキス。
イジワルな言葉。



そんなの、答えられるわけ
ないのに……。




あたしが何も答えられない
でいると、瑞樹は音もなく
そっとあたしの体に
触れてた手を離した。



そしてあたしから視線を
外して、独り言のように
ポツリとこう言った。
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