《完》オフィスでとびきりの夜を
それが怖かった。



だからモデルなんて
しないでほしかった。



だけど……

結果的に瑞樹は今、
こんなに遠くに行ってしまった。



(こんなにすぐ、
終わっちゃうのかな……)



まだつき合ってほんの
数ヶ月だったのに。


これからもっともっと、
ずっと一緒にいられると
思ってたのに。



ふいに涙が込み上げそうに
なってきて、あたしは
慌ててスカートのポケット
からハンカチを取り出す。



だけど手が震えてたせいで
うっかりそれを床に
落としてしまった。



拾おうと手を伸ばしたら、
横から伸びてきた長い
指が、少しだけ先にそれを
つかんで――。
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