《完》オフィスでとびきりの夜を
「べ、別にそんなことは……」



曖昧な返事はとても
課長を安心させるものじゃ
なかったろうけど、とり
あえず課長はそれ以上は
突っ込まないでくれた。



しばらくあたしの顔色を
うかがうように見てた
けど、やがて軽く肩をすくめて、



「まぁ、体調不良じゃ
なきゃいいけど。

これからどんどん忙しく
なるから、寝込んでるヒマ
なんてないからね!」



「はい……わかってます」



答えたあたしに、課長は
手ぐしで髪を直しながら
何気ない声で続けた。



「そういえば、莉央って
瑞樹の教育係だったのよね?」



「えっ!?」



あやうくまたハンカチを
落としそうになる。



やめてよ、この期に及んで
瑞樹の話なんて――…。
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