《完》オフィスでとびきりの夜を
「はい」



しっかりと答えた瑞樹に
課長も頷き、次にもう一度
あたしを見ると、



「莉央も。……本当に、
頼んだわよ」



「ハイ………」



念を押す声に力無く返事
して、あたしは逃げる
ようにその場を離れた。



席に戻り、デスクワークの
予定で出しかけてた荷物を
手早く片付ける。



課長に呆れられたことの
恥ずかしさと瑞樹と
出かけることになった
混乱がせめぎあって、
かすかに手が震えてた。



それでも何とか出かける
準備を整えると、様子を
うかがってたのか瑞樹が
ピッタリのタイミングで
声をかけてくる。



「それじゃ――行こうか、
莉央さん」



「あ、うん………」



……もうどうしようもない。
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