《完》オフィスでとびきりの夜を
あたしは瑞樹と連れ立って
会社を出た。



だけど会話は全くなく、
瑞樹は時々仕事のことを
つぶやくように口にするだけ。



電車に乗り、瑞樹の案内の
もと撮影事務所に移動する。



今回お世話になるのは
スタジオを併設した撮影
事務所のようで、瑞樹が
迷わず入って行ったのは
スタジオの方だった。



無人の受付に着くと、
瑞樹はそこにあった呼出用
電話で約束の相手を呼び出す。



「カメラマンの桜井さんを
お願いします」



受話器を置いた瑞樹と
しばらく待ってると、
やがて右側にあった階段の
方から足音が響いてきて、
一人の男の人が姿を現した。



その人は瑞樹を見ると軽く
ほほ笑んで、



「どうも、お待たせ」
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