《完》オフィスでとびきりの夜を
「あたしと圭輔は、もう
終わってるんだよ。

ずっとずっと、昔に」



静かな声で、一言ひとこと
区切るようにそう伝えたら。



圭輔は一瞬息を飲んで目を
見張ったけど――

やがて、フッと吐息の
ようなため息をもらして、
笑った。



そして、



「―――そうだな。

ゴメン」



少しだけ寂しそうな……
だけど穏やかな声で、
そう言ってくれる。



あたしは黙って首を横に振って、



「ううん。
謝る必要なんてないよ。

ありがと、圭輔」



昔と変わらない思いやり
には、素直にそう言いたい。



「礼なんか言うな。

だから言ったろ。
お前がすっかり美人に
なってたもんだから、
ちょっと調子乗っちまった
だけだよ」
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