《完》オフィスでとびきりの夜を
「“今は”って、
どういうこと――?」



ためらいつつも、あたしは
気になった部分を問い返した。



瑞樹ははにかむように
少しだけ唇の端をあげて、



「莉央とケンカになった
後に、考えて――…。

言葉で伝わらないなら、
形で見せればいいって思ってた。

オレが本気で仕事に取り
組んでるとこ見せて、
ちゃんと結果を出せば。

それを見れば莉央にも
伝わるはずだって――」



一息にそこまで言うと一度
言葉を切り、片手でそっと
あたしの頬に触れる。



長い指先であたしの存在を
確かめるように撫でながら、



「けど、違った。

もしかしたらオレ自身、
莉央とぶつかる度胸が
なくてそう自分に言い
聞かせてたのかもしれない」
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