《完》オフィスでとびきりの夜を
まっすぐな瞳、まっすぐな言葉。



あたしはそれが痛くて、
視線をそらさずにはいられ
なかった。



――何があったって
あたし達が恋人同士な
ことに変わりはない。

そんなことはわかってる。



でも……どうして言えるの?
“他の何も変わることはない”
なんて。



モデルになったら、瑞樹を
とりまく世界はきっと
ガラッと変わっちゃう。


その中で瑞樹もこれっ
ぽっちも変わらないなんて――

そんな保証は、どこにも
ないんじゃないの……?



「大切だよ、瑞樹が。

だから……大切だからこそ……」



―――“怖いんだよ”。



無意識に口をついて
出ようとした言葉で、
あたしは初めて自分の
気持ちをしっかりと認識した。
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