天空のエトランゼ〜蜃気楼の彼氏〜
「アルテミア…専用の武器」

少女の言葉よりも、振り返った僕の目に飛び込んできた少女の瞳の色の方が、僕に衝撃を与えた。

(何て…悲しい色なんだろう)

思わず、じっと見つめてしまった。

「あなたが、赤星浩一さんね」

そんな僕に、少女は微笑むこともなく、少し淡々とした口調で、呟くように言った。

「あたしの名は、夕美。あの町で生まれた女…。そして、あの町で…アルテミアによって、すべてを失った女」

「あ、あなたは!」

僕ははっとした。

実世界で見た時と、印象が違っていた為に気付かなかった。

「そうよ」

夕美は、視線を町に向け、

「あなたを呼んだのは、あたし…」

数秒後、僕を睨んだ。

「だけど、あなたに来てほしかった訳じゃないの。あなたに取り憑いた悪魔…アルテミアに用があったの」

「!」

僕は、色が変わった夕美の瞳に気付いた。

無感情かと思っていたが、一つの感情だけが抜きん出ていた。

冷たい程の怒りだ。

あまりにも長い間、怒りと憎しみに支配させた為に、それが当たり前になってしまったのだ。

(アルテミアと呼ぶときだけ…更なる怒りがわくのか)

僕がそんなことを考えていると、夕美はゆっくりと歩き出した。

「来て」

目以外は能面のように、表情がない。話していても、あまり動かない口元。

だが、あまり気持ち悪いと感じないのは、どこか凛とした佇まいだった。

それに、普通に見れば…美人だ。

町に向かって歩き出した夕美の背中に、僕は手を伸ばした。

「待って!町には、やつらがいる危険だ」

その言葉に、少女は足を止めたが、振り返ることなくこたえた。

「町の下に、地下街があるの。そこの一部は、安全よ」

「え」

僕は、驚きの声を上げた。そして、内心で胸を撫で下ろした。

(先程撃っていたら…大変なことに)

早まったことをしなくてよかったと、ほっと胸を撫でおろすと、夕美は言葉を続けた。

「だけど、地下街の殆どはゾンビの巣になっている。あたしの案内なしで、入ったら危ないわよ」


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