天空のエトランゼ〜蜃気楼の彼氏〜
結構、雄弁に話しているけども、口調はやはり淡々としている。

「ゾンビ!?」

僕は、ゾンビという言葉に反応してしまった。

そう言えば、この世界に来てからゾンビと遭遇したことがなかった。

後に、ロバートにきいたところ…僕が思うゾンビは、この世界ではあり得ないと言われた。

人が外で死んだ場合、確実に魔物に喰われると。

墓に埋めても、魔物に掘り起こされる場合が多いから、基本…火葬で葬るらしいのだ。

「ゾンビ…」

昔見た映画や、ゲームのキャラクターを思い出していた僕に、夕美は振り返ると、少し首を傾げて見せた。

「夕刻の谷では、珍しいことではないけど…」

「そ、そうなんですか?」

「バンパイアに血を吸われたものは死に…すぐに、魔物の餌になる。だけど、バンパイアの眷族に吸われたものは、ゾンビになる確率が多いの」

「ど、どうしてですか?」

「眷族は、バンパイアの為に血を蓄える。その為に、人の血を吸う。だけど、人一人分は吸えないわ。じわじわと吸われ、体から血がなくなっていく時に、眷族の細菌が入っていく。そして、死んだ後…その細菌により、体が腐っても、動くことができるようになる」

夕美の説明に、僕は顔をしかめた。

「でも、そんな腐ったやつの血を吸うことはないから、ほっておくのよ」

夕美はもう、説明する気もなくなったのか…口を摘むんだ。

「えっと〜」

僕は、彼女を後ろを歩きながら、鼻の頭をかき、質問した。

「夕刻の谷って…もしかして、あの町なんですか?」

「そうよ…」

夕美は頷いた。

「でも、普通の町ですよね」

恐る恐る…訊いてみた。

「バンパイアによって、絶滅した町も、そういうのよ。それに、彼らは…ビルを赤くしていたでしょ?余った血で、谷のようにしたかったのかもしれないわね」

「あはははは」

何故か…愛想笑いが出た。

「…」

夕美はまた、口を閉じた。

数分後、町の入口に着いた僕は、とあるビルに入り、夕美の案内で地下街へと降りて行った。

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