天空のエトランゼ〜蜃気楼の彼氏〜
「従者か!」

アルテミアはスパークした右手で手刀をつくると、夕美に向けた。

「ぎゃあああ!」

悲鳴を上げながら、牙が生えた夕美は床を蹴ると、飛びかかるように立ち上がった。

「失せろ!」

アルテミアの手刀が、夕美の胸に突き刺さったはずだった。

「!」
「!?」

アルテミアも僕も、絶句した。

アルテミアの手刀は、夕美ではなく…二人の間に飛び込んで来た数馬の胸を貫いていたのだ。

「あ、あ、あ…」

言葉はやはり発せられないが、数馬と呼ばれたゾンビの目から、最後の涙が流れた。

「か、数馬!」

アルテミアが手刀を抜くと、穴が開いた数馬の胸から、電気がスパークしていた。

そして、その場で倒れようとする数馬を、後ろから夕美が抱き止めた。

「フン」

軽く鼻を鳴らすと、アルテミアは2人に背を向けた。

牙が消え、瞳の色が元に戻った夕美は、数馬をぎゅっと抱き締めた。

その瞬間、電流は夕美の体も包み…数秒後、爆発した。

「ア、アルテミア…」

ゆっくりと、メインストリートからこちらに集まってくるゾンビの群れに、アルテミアは近付いていく。

「…殺す」

その言葉を呟いた後…アルテミアは群れに飛び込むと鬼神の如く、ゾンビ達を抹殺し始めた。

「…」

次々に姿を変えて戦うアルテミアに、僕は言葉を失った。

「ぼおっとするな!」

地下街を走り回り、さらに下にある地下鉄の跡地にまで来た時、あまりのゾンビの多さに、アルテミアは舌打ちした。

「アルテミア…」

「しゃらくさい!モード・チェンジ!」

エンジェルモードになったアルテミアは、地下鉄の天井を突き破ると、地上に出た。

そして、さらに上空に飛び上がると、翼を広げた。

「アルテミア…」

「やるぞ!」

魔力を込めた両手を、地上に向けた。

「ポイントが足りないよ!」

アルテミアと僕が共通で使うカードが、魔力の残量が少ないことをアラームで告げた。

「うるさい!そんなのは気合いで何とかする!」


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