天空のエトランゼ〜蜃気楼の彼氏〜
天空の女神であるアルテミアだが…肉体を失い、僕の体をベースにしている為に、魔力を使えない。

だから、カードシステムと言われるものから、魔力を供給しなければならないのだ。

そして、自らが魔物を倒すか…地道に働くかで得られるポイントの数によって、使える魔力が違ってくるのだ。

「くらえ!」

アルテミアの手のひらに、巨大な火の玉が発生し、地上に向けて放たれた。

その火の玉は、アルテミアがあけた穴から地下で着弾すると、数秒後…地下につながるあらゆる穴から、火柱が立ち上った。

その火柱により、地上の建物も燃え上がった。

さらに地盤沈下を起こし、町が崩れていった。

「やり過ぎた…」

その惨状を見て、僕は嘆いた。

ポイントの残量は、1となっていた。

0になれば、アルテミアでいることはできない。

しかし、エンジェルモードを維持することは流石に無理であった。

降下しながら、町を離れると、アルテミアは普通の姿に戻った。

白のワンピースを着たアルテミアは、炎に包まれていく町に背を向けて、歩き出した。

「アルテミア…」

僕が訊く前に、アルテミアは話し出した。

「さっきの女は、確かに…あたしの眷族だ」

「え」

「だけど…記憶がない!眷族を作った記憶がな」

アルテミアは自らの額に、手を当てた。

そして、唇を噛み締めた後、

「ずっと考えていた。自分がやったのか…。しかし、わからない。もしかしたら…子供の頃…」

アルテミアの頭に、姉2人に連れられて、町を襲った記憶がよみがえった。

「く!」

一度、顔をしかめた後、首を横に振った。

「わからない!だけど、あの女は、あたしの眷族!会った瞬間からわかった!」

「あの女の人は…」

僕は、恐る恐る口を開いた。

「眷族になり、町の人々をゾンビにしたのは、あの女だ。自分の彼氏もな」

「!?」

「さっきの3人は、マリーの従者だ。なぜ、ここにいたのはわからないが…」

そう…アルテミアの姉であるマリーの目的も、理解できなかった。
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