バレンタインなのに。

「バレンタインデーって、
 一体何の為に存在するんだろうな……」

にぼしを貪りながら、
遠い目をして呟いている。

「っていうかそもそも何の日だっけ?」

静かな笑みさえ浮かべ、彼は訊ねてくる。



「……恋人たちの……愛の誓いの日らしい……」

検索結果の表示された携帯を差し出す。



「もうさ、日本式はやめて欲しい!」

「欧米のでも、そう変わらないんじゃないか?」

「いや、そうでもない。
 だって品物関係ないし、
 男女も関係ない。
 親しい人に贈ったりもするんだろ?」

「最近は日本でも割とそうじゃないか?
 ほら、見てみろよ」

俺の指差す先には、
可愛らしくラッピングした包みを交換する女子達の姿がある。


「あれを友チョコと言うんだろ?」

「でもさ、あれは、ほら、
 女子同士の物じゃん?」

だからさ……と何かをもごもごと言っている。


< 2 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop