バレンタインなのに。
「バレンタインデーって、
一体何の為に存在するんだろうな……」
にぼしを貪りながら、
遠い目をして呟いている。
「っていうかそもそも何の日だっけ?」
静かな笑みさえ浮かべ、彼は訊ねてくる。
「……恋人たちの……愛の誓いの日らしい……」
検索結果の表示された携帯を差し出す。
「もうさ、日本式はやめて欲しい!」
「欧米のでも、そう変わらないんじゃないか?」
「いや、そうでもない。
だって品物関係ないし、
男女も関係ない。
親しい人に贈ったりもするんだろ?」
「最近は日本でも割とそうじゃないか?
ほら、見てみろよ」
俺の指差す先には、
可愛らしくラッピングした包みを交換する女子達の姿がある。
「あれを友チョコと言うんだろ?」
「でもさ、あれは、ほら、
女子同士の物じゃん?」
だからさ……と何かをもごもごと言っている。