バレンタインなのに。

「お、」

「お?」


「お前と食べるために買ったに決まってんだろ?!」


叫びながら箱を開け、
袋を破き、1つを摘み、
俺の口元に差し出してくる。

涙目で。

今日の彼は情緒不安定だ。
それもしょうがない。


何もかも、バレンタインデーのせいだ!


「さあ、食べろ!」

「いや、俺にくれても、
 そもそも逆でもなんでもねーよ!
 っつーか生臭い!!」


にぼしの臭いが手に移り、
そしてその指で持たれたチョコもまた……

そのチョコを、彼は自分で食べた。
直後、ペットボトルの紅茶を呷る。


「なんか……ゴメンな?」

直前まで彼はにぼしを食べていた。

臭いだけじゃなく、味まで混ざったか……
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